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電子書籍は本当にエコか 35冊で逆転する環境負荷の分かれ道

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電子書籍は本当にエコか 35冊で逆転する環境負荷の分かれ道

電子書籍は紙の本より環境にやさしいのか。端末の製造負荷を何冊の読書で回収できるかという「35冊の境界線」を手がかりに、読む量や使い続ける年数、買い方まで含めて現実的な選び方を整理します。

ニュースの概要

AERA DIGITALは、電子書籍は紙の本より環境にやさしいという通説を取り上げた。電子書籍は紙や印刷、輸送の負荷を減らせる。一方で、読書端末の製造には資源とエネルギーがかかる。報道では、端末の負荷を読書量で割ると、おおむね35冊前後で紙の本と環境負荷が逆転するという試算が示された。つまり、読む量が少ない人は紙のほうが小さい負荷で済む場合がある。逆に年に何十冊も読む人なら、電子のほうが有利になりやすい。ただし、これは端末の種類や使う年数、紙の本の流通方法によって前提が変わる。環境にやさしいかどうかは、媒体そのものよりも使い方で決まるという点が、この話題の核心である。

引用元: 電子書籍のほうが「エコ」は本当か 紙の本との環境負荷が逆転する「35冊」の境界線(AERA DIGITAL)

分析・見解

35冊という数字は端末の製造負荷から決まる

電子書籍の環境負荷で最も大きいのは、本の中身ではなく端末である。電子書籍リーダーやタブレットは、半導体、電池、液晶、金属部品を使う。これらの採掘や加工、組み立てで出る温室効果ガス(=地球温暖化の原因になる気体)は、端末一台でかなりの量になる。一方、一冊の電子書籍をダウンロードして読む際の電力は小さい。だから、端末の製造分を何冊で回収できるかが勝負になる。報道の35冊は、その回収に必要な冊数の目安だ。

ここで重要なのは、紙の本の負荷が一冊ごとにほぼ一定で積み上がる点である。紙は原料の木材、製紙、印刷、製本、輸送、返品、廃棄まで、冊数に比例して増える。電子は最初に大きな負荷を負い、その後は増え方が緩やかになる。この形の違いが、グラフで二本の線が交わる地点を生む。

前提が変わると交差点は大きく動く

35冊は固定の真理ではない。紙の本は返品率が高く、出版業界では売れ残りの返品が三割から四割に達する年もある。返品された本の輸送と廃棄も負荷に含めると、紙の側の数字は重くなる。逆に、図書館で借りた本や古本を回し読みする場合は、一冊あたりの負荷が大きく下がる。同じ一冊を十人が読めば、負荷は十分の一になる計算だ。

端末の側も同じである。既に持っているスマートフォンで読むなら、端末の製造負荷を新たに増やさない。この場合、交差点は事実上ゼロ冊になり、電子が最初から有利になる。反対に、読むためだけに最新のタブレットを買い、二年で買い替えるなら、回収は遠のく。つまり、新しく買うか、既存の機器を使うかが分かれ目だ。

使い続ける年数と読書量が結果を左右する

端末を五年使えば、一年あたりの製造負荷は二年使う場合の半分以下になる。月に三冊読む人は一年で三十六冊に届くので、一年ほどで紙との交差点を越える。月に一冊の人は、三年かかる。さらに、端末は電池の劣化やソフトの更新終了で寿命が決まる。電池を交換できる機種や、長期の更新を約束する機種を選ぶことが、環境面では効いてくる。

ここに、あまり語られない視点がある。電子書籍は買いやすいぶん、読まない本も増えやすい。いわゆる積読は紙でも電子でも起こるが、電子は置き場所の制約がなく、セールのたびに増える。読まれない本の負荷は無駄になる。冊数ではなく、実際に読み切った冊数で考えるのが、本来の評価の仕方である。

環境の議論は媒体の優劣から使い方の設計へ移る

今後は、媒体の勝ち負けを問う議論は意味が薄れるだろう。ライフサイクルアセスメント(=製造から廃棄までの全体を測る手法)が広まり、事業者が端末ごとの数値を公開する流れも強まっている。EUでは製品の修理しやすさや電池交換の義務化が進む。端末が長持ちしやすくなれば、電子の側の交差点はさらに早まる。読者に求められるのは、自分の読む量と機器の使い方を知ることだ。

ビジネスへの影響

出版社と書店は読者の使い方に合わせた提案ができる

出版社や書店にとって、紙か電子かの二択で語るのは古い。大量に読む読者には電子を、少量を丁寧に読む読者には紙や図書館連携を勧める方が、実態に即している。返品率の改善は、紙の環境負荷を直接下げる施策でもある。注文数を絞る受注生産や、デジタルとの同時発売を組み合わせれば、廃棄の削減を数字で示せる。サステナビリティ報告に載せる指標としても使いやすい。

企業の資料や研修は端末の持ち方から見直せる

一般企業では、紙の資料を電子に切り替える動きが続いている。ここでも同じ計算が当てはまる。新しくタブレットを全員に配るなら、製造負荷が先に発生する。既に社員が使っている端末で読ませるか、共有の端末を長く使うかで、削減効果は大きく変わる。導入前に、何人が年にどれだけ読むかを試算するとよい。

環境をうたう販売は根拠の見せ方が信頼を決める

電子書籍や端末を売る側が、環境にやさしいと断定するのは危うい。読者は報道で35冊の話を知り、疑いの目で見る。端末の寿命、修理の対応年数、下取りの仕組みまで開示する事業者のほうが、長期では信頼を得る。数字の前提を明示し、読む量に応じた使い方を案内することが、実務での強みになる。

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